テンソルを勉強する2(一次形式について)
この記事では一次形式について勉強します。一次形式は共変ベクトルや余接ベクトルとも言います。いろいろ言い方はあるみたいですが(そしてそれらは微妙にニュアンスが違うっぽいですが)、とりあえず以下では一次形式という呼び方で統一します。
一次形式をすごく大雑把に言ってしまえば、ベクトルを引数に取る線形の実数値関数です。ベクトルを実数に対応させる関数があって、しかもそれは線形関数になっている、というただそれだけです。一応以下にちゃんと定義しておきます。
定義
をベクトル空間とする。上の一次形式とはからへの写像
\begin{align}
\tilde{p} : V \to\mathbb{R}
\end{align}
であって、 とについて
\begin{align}
\tilde{p}(aX+bY) = a\tilde{p}(X) + b\tilde{p}(Y)
\end{align}
を満たすものである。
上の一次形式にはいろんなものが考えられますね。たとえばどのベクトルにも0を対応させるもの(テキトーにと名付けます)だったり、ベクトルの絶対値を対応させるもの(同じくテキトーにと名付けます)だったり…とまぁいろいろあるわけです。それら上の一次形式を全てひっくるめた集合をと書くことにします。ってわけです。
さて、ここで一次形式の間に和とスカラー倍を定義します。
定義
とについて
\begin{align}
(\tilde{p}^1+\tilde{p}^2)(X) &\overset{def}{=} \tilde{p}^1(X) + \tilde{p}^2(X)\\
(a\tilde{p})(X) &\overset{def}{=} a\tilde{p}(X)
\end{align}
これによってもまたベクトル空間になります。
証明
定義を確認すれば自明なので省略
いつか更新するかも
次に双対基底について解説します。
で、いきなり定義から入ります。
定義
任意の基底に対し、以下のような一次形式を定義する。
\begin{align}
\tilde{\omega}^\mu(\vec{e}_\nu) \overset{def}{=} \delta^\mu_\nu
\end{align}
このとき、一次形式の集合はの基底になります。
証明
(1) が線形独立であること
(2) に属する任意の一次形式がの線形結合、すなわち
\begin{align}
\tilde{p} = p_\mu \tilde{\omega}^\mu
\end{align}
で表せること
の2点を証明すれば、「一次形式の集合はの基底になっている」ということを証明したことになります。(1)の証明
基底の定義より
\begin{align}
a_1\omega^1 + a_2\omega^2 + ... + a_{\mu}\omega^\mu = 0 \tag{a}
\end{align}
と仮定して、
\begin{align}
a_\nu = 0 ~~~(\nu = 1,2,..,\mu) \tag{b}
\end{align}
になることを示せばよい。
(a)に引数として(は任意)を指定すると、
\begin{align}
a_\mu \omega^\mu(\vec{e}_\nu) &= 0 \\
\Leftrightarrow a_\mu \delta^\mu_\nu &= 0 \\
\Leftrightarrow a_\nu &= 0
\end{align}
となり、(b)が示せた
(2)の証明
任意のに対して、
とおく。このとき、
\begin{align}
(p_\nu \tilde{\omega}^\nu)(\vec{e}_\mu) = p_\nu \delta^\nu_\mu = p_\mu \tag{d}
\end{align}
(c)と(d)を比べると、
\begin{align}
\tilde{p} = p_\mu \tilde{\omega}^\mu
\end{align}
は任意だったので、に属する任意の一次形式がの線形結合で表せることを証明できた。
これにより任意の一次形式はの線形結合で書けることが分かります。
すなわち、
\begin{align}
\tilde{p} = p_\mu \tilde{\omega}^\mu
\end{align}
は成分であり、(c)から分かるとおり引数に基底ベクトルを取ると得られます。
のことを の双対基底と言います。